チャプター4 〔貴重な白 6〕
この章は透明水彩の特徴である塗り残し(ネガティブ・ペインティング)技法が随所に出てきます。紙の白に近いところにはなに色でも乗せることができますが、濃い色(強い色、暗い色)に明るい色は乗せられませんね。そのため、透明水彩では明るいところを塗り残す必要があります。これって、当たり前のようでいて意外とみなさん忘れてしまうところなで、じっくり研究してみてください。
《42分34秒〜43分08秒》
マスキングは、筆では塗り残しづらいところをカバーしておいて、あとで剥がして紙白を塗り残すわけですが、なんでもかんでも明るいところすべてにマスキングを塗って安心してしまっている方を見かけます。しかし、マスキング液を使った白は筆で塗り残した白とはタッチが違うのですぐわかります。できれば筆で塗り残すように心がけ、どうしても塗り残せない細い線や複雑な図柄などに最小限度で使用するのが望ましいと思います。今回の場合、永山さんはガラスの反射はマスクしていますが、水面はマスクしていません。
私もそうすると思います。なぜなら、ガラスは細く複雑な形の反射で塗り残しずらく、水面は比較的広くシンプルな形で筆でも塗り残せるからです。
《43分09秒〜43分31秒》
『画面全体を意識しながら描き進める。』 これはとても大切なことでありながら、初心者ほど忘れてしまうことなのではないですか?
よく教室で見かけるのですが、朝来てモチーフの前に座って描き始め、トイレ以外は一度も席を立たず描き続け、そのまま講評を受ける人。それでは全体を意識しているとはいえませんね。画面全体に意識のいってる人ほど全体のバランスをチェックしないと安心して進められないので、絵を遠くから見たり、逆さまにしてみたり、鏡越しに見たりと“客観的に突き放してみる工夫”をするものです。
みなさんはいかがですか?
《43分50秒〜43分56秒》
バックを塗りながらダリアのギザギザな輪郭を塗り残していきます。油絵具やアクリル絵具のような不透明絵具でしたらバックを塗っておいてあとから明るい色や派手な色で花びらを描いていけばいいわけですが、先にも述べたように透明水彩では明るい色、派手な色が乗らないので、周りを描くときに塗り残して浮き上がらせることが必要になります。この塗り残し(ネガティブ・ペインティング)が水彩画特有の色面を作り出します。
《44分20秒〜45分05秒》
永山さんの平筆の使い方はたいへん参考になります。平筆には平らな面もあり、角もあり、直線もあるので、それを上手く駆使できれば非常に便利な筆となります。「線を引く時なども平筆を使います」と言っていますね。要は、道具も使う人の工夫一つで生きも死にもする
ということですね。「弘法筆を選ばず」永山さんもいい筆ばかりではないようで、『筆遣いが乱暴なので、すぐ壊れるからいい筆だともったいない』とも言っています。これはとても意味深で、私には「筆の使い方は自由だから、自分のほしいタッチを得るためには何でもしますよ」と聞こえます。
つづく>>