『永山流 水彩画法 -永山裕子 薔薇を描く-』を10倍楽しんでください! Vol.9
チャプター4 〔貴重な白 5〕

《38分26秒〜40分29秒》
反射の話はVol.4でも出てきましたね。洋梨がお互いに反射し合ったり、テーブルやトレイにも影響している事を発見しないと描けませんね。私たちは日常生活の中ではそんな見方をしていませんので、意識して観察しないと見つからないと思います。反対に、絵を描くと今まで見えなかったものが見えるようになるとも言えます。 さらに飛躍して、実際に写りこんでいるかどうか怪しくても、色が見えたら描くべきですし、仮に見えなくても「いろんな色が写りこんでいるはずだ。」とか「あったらきれいだろうな。」と自分の判断で色を入れてみてもいいと思います。ちなみに、私は生徒さんに「白い花の陰に、グレーだけは使わないように。白は一番カラフル!」と言っています。なぜなら白は、写りこんだ色を一番正確に映し出すからです。映画やスライドは白い画面に映すときれいなのはご存知の通りです。
永山流 水彩画法

《40分35秒〜41分15秒》
「あくまでも絵ですから」 “そっくりに”“写真のように”描くことが目的ではなく、対象(モチーフ=材料)をよく見て、知り、咀嚼して自分の絵にすることが大切だと思います。写真に近づこうとしている限り、絵より写真の方が上ということになってしまいます。キュビズムやシュールレアリズムのような作品を目指すのでなく、あくまでも具象的な描写を目指すのであればデッサン力は必要ですし、物の形は正確に描けるに越したことはありません。ただ、“写真のように”描けることがデッサン力があるということではないと思います。写真と絵画の違いは、誤解を恐れずに一言で言えば、『絵画は作者の解釈の表出』であり、写真は『光学的(網膜的)画像の定着』なんじゃないかなぁと思います。もちろん、写真にも作者の解釈が反映することは言うまでもないですが、直接手を下す絵画の方がより作者の“生の声”が反映されるのでは
ないかと思います。

《41分19秒〜41分32秒》
「こっちの方(主役周辺)はこのままにして・・・」と言いながら、おもむろに洋梨などに使っていた色を洋梨周辺にピッピッピッと飛ばしてますね。スプラッタリング(またはドロッピング)と言いましたっけ。一度描いた上にお構いなしに飛ばしています。このタイミングでの絵具飛ばしが非常に興味深かったので、永山さんに聞いてみました。「どういう時に絵具を飛ばすんですか?」すると「あまり意識していないけど、馴染ませたい時かなぁ???」とのこと。描いてる本人はその時点ではあまり考えず感覚に任せてやっているようです。私も自分が描いている時の事を聞かれても的確に答えられないと思うので、よくわかります。でも、その後永山さんはその訳を自己分析してくれました。ここら辺が永山さんの優しさだと思います。先日撮影を終えたばかりの第二弾でしっかりと説明してくれていますので、今回は割愛しますが・・・。

《42分08秒〜42分30秒》
マスキングを取るタイミングですね。確かに私もそういう経験が少なからずあります。また、グレーや青のマスキングの色がとてもきれいに見える時があります。こういう時は十中八九、マスキングを取るとシラっとしてしまいます。マスキング液のタッチ(塗った形)はいかにも“マスキングしました!”というように白く残りますし、取りっぱなしだと不自然に目立つ場合が多いので、必ず八分完成くらいの時に取って上に絵具をかけるなり、白抜きの形を自然にするなりの修正が必要になってきます。「最後にマスキングを取って完成!」にしたい気持ちはよくわかるのですが、取りっぱなしでは目立ちすぎて絵がだいなしです。
永山流 水彩画法


つづく>>