すでに DVD『永山流 水彩画法 -永山裕子 薔薇を描く-』を見ながら“永山流”に挑戦なさった方も多いと思います。多くの方から、「とてもわかりやすい」「一部始終が見られて感激した」などの感想を頂いています。反面「途中がカットされていないか」と疑問に思う方もいらっしゃるようです。特に薔薇の花が浮き出る場面では多くの方が「魔法のよう」と思われるほどですが、一切カットはしていません。早送り映像をこまめに見ていただいてもわかると思います。現場にいた私が断言します。
それから、生徒さんのお話を聞いていると、見ただけでおなかいっぱいで細かくは見ていない方も多いようです。このDVDでは永山さんが持てるノウハウを惜しげもなく披露してくださっていますので、よーく見ないともったいないですよ!ダ・ビンチだってミケランジェロだって人の真似(模写)をして勉強したのですから、大いに真似て、その中から“自分流”を見つけ出してください。
というわけで、注目の DVD『永山流 水彩画法 -永裕子 薔薇を描く-』を私の独断と偏見+永山さんの注釈+制作秘話なども入れながら何回かのシリーズでお話したいと思います。
では、初めに描き出し部分の 〔タイトル2 チャプター2 構想〕 の解説(解析)から始めたいと思います。
チャプター2 「構想」
《2分13秒〜2分55秒》
ここで重要なのはモチーフ(対象)に向かった時に描く絵の構想がほぼ出来上がっているということ。イメージが沸かなければ絵は描かないとも言っています。教室では勉強ですからすでにセットされたものを描くしかないですが、それでもイメージを膨らませて描くべきだと思います。もちろん自分でモチーフをセットする場合やスケッチに行く時など、描く前にしっかりしたイメージを持つことは大切ですね。
《2分55秒〜3分10秒》
「モチーフを多めに用意する」ということは、全部描かなくてもいいということです。どこを切り取るか考えるということでもあります。用意されたモチーフをそのまますべてそっくりに描こうとする方がいますが、永山さんは「そんな必要はないですよ」と言っているんですね。自分のイメージに必要なければ省いてしまえばいいのです。写真のように全部写ってしまうのではなく、自分のイメージで省いたり、加えたり、変えたりできるから“絵”なんですよね。「写真みたい」というのは決してホメ言葉ではありません。
《6分15秒〜7分10秒》
鉛筆でしっかり描いておいて絵具はサラリと塗る“淡彩画”も魅力的ですが、ここでは絵具でしっかり描くことが前提です。初心者の方にとっては鉛筆で下描きをしておかないと不安だと思います。でも、あまり下描きをキッチリしすぎると水彩画の魅力であるにじみ・ぼかしなどの「偶然の効果」が活かせません。どうしても下描きの線に縛られて絵具の自然現象を愉しむ余裕が持てなくなってしまいがちです。一度でいいです、水をたっぷり使って怖がらずに「なるようになれ!」くらいの気持ちで思い切ってぶちまけてみてください。あるいは何も描いてない水彩紙に好きな色をぶちまけて、それが乾いてから下描きを始めてみてはいかがでしょう。何か発見があると思いますよ!私の塾では『ぶちまけ方式』と言っています(笑)
《8分30秒〜8分50秒》
ここでも“イメージング”の話が出てきます。デッサンをしながら「次のこと、次のことを考え」てイメージを確実にしていくことが大切です。ただ、モチーフ(対象)を写し取ることばかりに気をとられるのでなく、このモチーフをどう料理(解釈)して絵にしよう、そのためにはどれを主役にして、これは画面からはみ出して、このあたりは目立たないように、これは描かないでこれはもうちょっと横に・・・といったことを考えながらデッサンしていきます。鉛筆のザックリしたデッサンを描きながら、頭の中には描いていく段取りや色のイメージ、見せ場のイメージ、脇役のイメージなどの脚本が渦巻いているわけです。映画監督のように。
つづく>>