笠井一男 『透明水彩 シンプル・レッスン -水の力を生かして描く-』発売記念
特別インタビュー

笠井一男

(このインタビューは
2011.3.4に行われました。)
出版おめでとうございます。


ありがとうございます。

本が完成した感想を教えてください。

とても気にいっています。
全体的には凄くきめ細かくできているんじゃないかなと思います。
かゆい所に手が届くとまでは行かないかもしれませんが、今までの教則本とはちょっと一味違う感じになっているのではないかと思っています。

タイトルがシンプルレッスンということですが、具体的にはどういった内容ですか?

文字がなくてもわかるような本にしようということを出版社側から言われまして、私もそれは大賛成でしたので、文字がなくても絵だけパラパラっと見ても言いたいことが伝わるという感じになっていると思います。
内容としては、水彩画の一番大事なポイントである、“手順”をわかりやすくお見せすることに気をつかいました。水彩画は、一度間違えると取り返しがつかないということもあって、みなさんが苦労されていることもよく知っていますので、手順さえ間違えなければリスクを避けられるということを、この本で説明したかったというのがあります。
ですから説明している過程プロセスの写真もありますし、それを見て頂けると分かりやすいと思います。
それから、白い紙を生かすために、明るいところや鮮やかな色を先に塗っていくということを詳しく説明しています。
そして、みなさん輪郭というのがあまりにもシルエットの形ばかり追っていて中の形を追えていないので、そこをどう描いていくかというのが大きなテーマでした。
その辺りを見て頂きたいですね。

本を拝見しましたが、図などを使ってとても理論的に解説されていたのでわかりやすかったです。絵を描くというと、どうしても感覚的な部分を重要視してしまいますが、理論の部分も大切だと実感しました。

ありがとうございます。
もしかしたら画塾で教えている時も、比較的理論的に説明しているかもしれません。
もともと理屈っぽいものですから(笑)
感覚はもちろん大事ですが、感覚だけでなくて理論も頭の隅に入れて頂くと色んなものが見えてくるはずです。私自身も右脳と左脳を両方使って絵を描けるようになりたいですし。だから理論も大事、感覚はもちろん大事ということが本にも表れていると思います。

笠井一男

動画塾のようにポイントをしぼったモチーフで説明している所も分かりやすいですね。

複雑に完成した作品から説明するのではなく、要素をできるだけ単純にして説明して、分かりやすくしました。
やっぱり動画塾をやって、色々説明していくコツなんかもわかるようになってきたかもしれません。
動画でやっている部分と、書籍でやっている部分というのはもちろん違うと思いますし、どちらも良いところがありますね。

両方見るとより分かりやすいかもしれないですね。

そうですね(笑)

動画塾は比較的に初心者の方にも分かりやすい基本的な内容だと思うのですが、本に関してはどうですか?

本に関しては初心者から上級者まで、初心者の方にもわかりやすく、上級者の方が見てもなるほど!という風に思ってもらえる本にしたかったので、初心者の陥りそうなところも入ってますし、上級者の方が悩んでることも解決できるようなものになってるといいなと思っています。

表紙がいい意味で技法書っぽくないですよね。お洒落な感じというか…

そうですね!これは編集者とデザイナーの方の力だと思います。とてもいい感じで、表紙ができあがるまで、私もいわゆる教則本っていう感じの表紙になるんだろうなと思っていたのですが、できあがったものをみたら、お洒落でシンプルだし、本当に気にいってます。

お洒落と言えば、本の中で解説の際に出てくるモチーフがビリヤードの球だったり、ゴルフボールだったり、ちょっと面白いなと思ったんですが。
あんまり教則本とかで見たことなかったので…、これは以前からおっしゃっていたチョイ悪水彩を意識されてのことですか(笑)?


はははは(笑)

いやいやチョイ悪というか、よく教則本とかだとリンゴが出てくるので、同じようなモチーフでは面白くないなというのはありました。ちょっと違うもので説明した方がみんな新鮮に感じるだろうし、意外とそういうものの方が実際に近いというか、普段の生活でこういうものを描いたり見たりしてるだろうから、こういうものがいいかなと思って。
リンゴだと今までみた説明とかぶってしまって鮮度がないじゃないですか。
ビリヤードである必要なんかは全くなかったんですけど(笑)

出版記念で個展も開催されるそうですね。

(2011年)3月16日〜22日まで京橋のギャラリーび〜たさんで開催します。
※本展覧会は終了いたしました。展覧会の模様はこちらからご覧頂けます。

この本の原画も展示されるんですか?

そうですね、基本的には原画展みたいな感じで、その他にも色々展示します。
ページの都合上、編集で掲載できなかった作品とかもありますし、本の中で説明用に使用したも作品なども展示予定です。

ところで、最近twitter やfacebook、動画塾でご自身の作品を発表するなど、今までの水彩画界ではなかったような新しい試みをされていますよね?

私は特にそんなに珍しいことだと思ってなくて。もちろんtwitter やfacebook自体が新しいものだからそれと水彩画がどう結び付くのかが分かりにくい部分はあると思いますが、でも実際にやってみると海外の水彩愛好者の方と交流ができたりするという利点もあるし、みんなやるべきだなと思います。やらない理由が見つからないというか。いいことばかりなので。
個展をやるなど、自分の作品を発表する場って、具体的な活動として大事だと思うんです。個展を開くまではいかなくても、ネット上での発表も、かならず自分に何か返ってきます。しかも殆どタダで人に見せることができますし。
以前、画塾のブログにも書きましたが、人目にさらすってすごくだいじなことで、その分反応がかえってきますから。ちゃんと。
そういう意味では簡単に人の目にさらすことができるメディアとしてtwitter やfacebookなど使用してみるのも面白いと思います。きっと勉強になりますよ!

最後に水彩画ファンに向けて一言

多分水彩画は、これからどんどんファンの人口が広がっていくと私は確信しています。
楽しいし、奥が深いし、安価で時間もかからず、匂いもなく、しかも作品も紙ですから管理も簡単という色んないいところがあります。
それから、特に水彩画で一番いいと思うのが、教える人と教わる人の間にあまり距離がないということです。教える人も偉そうじゃないし、教わる人も気楽に声をかけられるという関係が、なぜか水彩画界にはあって、それが私は凄く好きなんです。
そういうおもしろい関係性も含めて、魅力のある特別な世界だと思うので、これから始める方も気軽にどんどん入ってきて欲しいなと思います。

今日はありがとうございました。

ありがとうございます。





笠井一男プロフィール
出身 山梨県甲府市
生年月日 1955年4月26日
最終学歴 東京藝術大学 大学院終了(1981年3月)
パルコ宣伝部部長を経て

2002年6月 美術学校開校と地域文化活性化を目指し、パルコを退社
2002年11月 横浜画塾 開講
2002年11月 横浜画塾 開講
2003年10月 「水彩画のすすめ」(宝島社)出版
2004年5月 星野リゾート「星のや 軽井沢」水彩画制作
2004年10月~ MOA美術館 都筑児童作品展審査委員長 歴任
2005年10月 第一回横浜画塾展
2006年10月 第二回横浜画塾展
2007年1月 初個展開催(新宿ギャラリートーニチ)
2007年9月 第三回横浜画塾展
2008年2月 永山裕子氏初DVD「永山流 水彩画法-永山裕子 薔薇を描く-」監修
2008年8月 星野リゾート「星のや 京都」他 水彩画制作
2009年1月 4人展「水の上でうたう」(新宿ギャラリートーニチ)
2009年3月 第4回横浜画塾展
2009年8月 永山裕子氏DVD「永山流 水彩画法-永山裕子 果物と紫陽花を描く-」監修
2009年12月 笠井一男 水彩画展『東京描写』(コンセプト21)
2010年5月 第5回横浜画塾展
2010年9月 4人展「水の上でうたう vol.2」(庭園ギャラリー 櫻守)
2010年11月 笠井一男 水彩展“横浜陰影”(庭園ギャラリー 櫻守)
2010年11月 永山裕子氏DVD「永山流 水彩画法-永山裕子 人形と百合を描く-」監修

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